卵巣がんの確定診断を受けたが、ずっと落ち込んでいる暇はなかった。
やらなければならないことが山のようにあった。
休職と退職の手続き
地元に帰るための準備
本来の予定であれば3月末に退職し、離婚調停の様子を見ながらゆっくりと引越し先を探す予定だった。
がんが確定したことで全て前倒しで進めなければならなかった。
病院も地元に転院することに決め、毎週のように受診や検査のために地元を往復した。
その間にも痛みはどんどん増していく。
最後の方はあまり動けなくなり、1日の大半を横になっていた。
食欲も低下し、うどんやおかゆ、ゼリーなどしか食べたくなくなった。
なのに体重は増えて行っており、ぞっとした。
がんが大きくなっているんだと思った。
(このまま破裂したら、本当にダメだろうな・・・。)
と妙に冷静に思ったり、何とか手術までもって・・・と祈るような気持ちになったり。
3月末、手術のために入院。
手術まではもちこたえたが、もう体をくの字に曲げ、おなかに響かないようにゆっくりとしか歩けなくなっていた。
手術前の主治医からの説明内容はこのようなものだった。
・卵巣は腹部の奥の方にあるため、手術をしないとがんの種類もステージも詳しくわからない
・手術中の迅速診断でどこまで摘出するか決める
・病理検査の結果、ステージⅡB以上なら100%化学療法実施
・場合によっては一時的に人工肛門になることもある
卵巣と子宮を摘出するのは確定だった。
やっとこの痛みから解放されるという安堵と、もうこれで本当に子どもは産めなくなるという寂しさと、この先どうなるのかという不安。
この頃を思い出すと、言葉に表現することができない何とも言えない感情だったと感じる。
でもこの時はまだ
(何とかできるのは自分しかいない。)
と自分に言い聞かせていた。
目の前に現れた大きな山に登らなければと必死になり、自分の気持ちや感情は常にどこかへ置いて行っている状態だった。
術後、ICUで目が覚めたのは夕方の6時前。
予定では3時ごろに終わっているはずだった。
腹部を確認すると右下腹部にパウチが着いていた。
(あぁ・・・やっぱり人工肛門になったか・・・)
主治医が入ってきて、
「大変な手術だったけど、取れる所は取ったからね。」と言われた。
術後2日目、主治医から手術結果の説明を受けた。
・左の卵巣の一部が子宮と大腸の間に入りこんで癒着していたため、大腸を15cmほど切除→大腸をつなぎ直しているので、人工肛門造設
・右の卵巣は尿管にからみついてしまっていたので、尿管も1センチほど切除
・両卵巣は赤ちゃんの頭ほどの大きさで、中に液体が貯留
・腹壁に数か所赤くなってる箇所があり、そこも調べたが、がん細胞は見つからなかった→腹膜播種なし
・がん種は明細胞腺がん
・骨盤内の他臓器にがんが進展していたので、ステージはⅡB
抗がん剤投与が確定した。